「紙の厚みは90kgと110kgのどちらにしますか?」
印刷会社との打ち合わせで、よく聞かれることですよね。
「厚みを表すのに、単位が“kg”??」
「厚み」と「kg」の関係がリンクしない。
確かに違和感がありますよね。
そうなんです。
結論からお伝えすると、これは厚みではなく重量を表しています。
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基本となるJIS規格
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重さの前に、サイズの話をしておきましょう。
身近な印刷物では、A4やB5といった規格サイズを
よく見かけます。
A4に代表されるA列は国際規格、
一方、B4やB5などのB系列は日本独自の規格です。
いずれも、JIS(日本工業規格)に定められています。
◎A列
A1 |
594×841mm |
A2 |
420×594mm |
A3 |
297×420mm |
A4 |
210×297mm |
A5 |
148×210mm |
◎B列
B1 |
728×1,030mm |
B2 |
515×728mm |
B3 |
364×515mm |
B4 |
257×364mm |
B5 |
182×257mm |
このように数字が一つ大きくなるにつれて
紙のサイズは半分になります。
ここまでは、多くの方に馴染みがありますよね。
一般にはあまり知られていないのですが、
印刷業界では、これとは別のJIS規格もよく使われているのです。
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110kgは○○の重量
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もう一つのJIS規格。
それは紙の原紙サイズです。
原紙とは、印刷する前のもととなる紙。
例えば、A4サイズのチラシを作るときには、
プリンターのようにA4の紙を通すわけではありません。
印刷機に紙を通すためには、一定の余白が必要。
そのため一回り大きい紙を通して印刷し、
その後、断裁することでA4サイズに仕上げているのです。
原紙サイズとしては、以下四つの規格がよく使用されています。
◎紙の原紙サイズ
四六判 |
788×1,091mm |
B判 |
765×1,85mm |
菊判 |
636×939mm |
A判 |
625×880mm |
「四六判」は「しろくばん」と読みます。
一般的にB系列の印刷物を作る際には四六判かB判、
A系列の印刷物では菊判またはA判の用紙を使用します。
さて、いよいよ本題です。
「90kg」「110kg」とはなんなのか。
これは、上記の原紙を1,000枚積んだときの重量を表しています。
例えば「コート110kg」は、四六判の紙を1,000枚積むと
重量が110kgになるコート紙という意味です。
110kgは、四六判の規格。
当然、サイズが小さくなれば、1,000枚あたりの重量も軽くなります。
四六判110kg、B判106kg、菊判76.5kg、A判70.5kg
これらはすべて同じ紙を指しています。
業界の中では、四つの規格の中でも、
「四六判」をベースに考えることが基本。
ネット印刷の注文ページで見られる
73kg、90kg、110kg、135kgなどは、すべて四六判の規格です。
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厚み≠重さ
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なぜ「厚み」と言いながら重量を示すのか。
正しくは分かりませんが、きっとそれが多くの人にとって
分かりやすいからだと思います。
もちろん、純粋に紙の厚さで区別することも可能です。
コート紙を例にすると、紙の厚みは以下のとおり。
◎コート紙
90kg |
(約)0.08mm |
110kg |
(約)0.10mm |
135kg |
(約)0.13mm |
ただしこの数字については、製紙メーカーによっても
若干の違いがあります。
さらに同じ重量だとしても、紙質によって厚みは変わります。
◎マットコート紙
90kg |
(約)0.11mm |
110kg |
(約)0.14mm |
135kg |
(約)0.17mm |
◎上質紙
90kg |
(約)0.12mm |
110kg |
(約)0.15mm |
135kg |
(約)0.18mm |
このように、同じ重量だとしても紙質によって厚みはバラバラ。
厚みで区別しようと思うと、意外と煩雑になるのです。
そもそも「紙の厚さは0.08mmと0.10mmのどちらにしますか?」
と聞かれても、ちょっとイメージしづらいですよね。
重さで違いを表現したほうが、
メリットが多いということでしょう。
ちなみにコート紙とマットコート紙は、
基本的に販売単価が同一です。
つまり、仕様・数量が同じであれば、
どちらの紙を選んでも価格は一緒。
先ほど紹介したとおり、紙質によって厚みは異なります。
紙質にこだわりがないのであれば、厚みで紙を決めるのも
一つの考え方ですね。